カラーが与える効果とは?

私たちの周りにはありとあらゆるところにさまざまなカラーが存在しています。自然界の中にも豊富なカラーが存在していますし、建築物や生活空間にもたくさんのカラーがあふれています。

カラーは私たちの生活に彩りを持たせてくれるだけではなく、脳や神経・ホルモンの分泌にも影響を与え、人間の心や体の健康のために大切な働きを持っていることがわかっています。そしてカラーは私たちの感情にも大きく関わっており、人間とも密接に繋がっています。今回はカラーが与える効果についてご紹介します。


カラーには以下の生理学的効果と心理学的効果があります。


A. 脳の活動に作用する

B. 自律神経やホルモン分泌に影響する

C. 感情や共感覚・連想を呼び起こす


【色の生理学的効果】


“A 脳の活動に作用する“ 

生理学的効果として、松果体、脳下垂体、視床下部、小脳に色が作用することがわかっています



松果体

松果体は人体の光度計の働きをしています。光は目を経由して松果体に届きます。

光で活性化された情報を目から視床下部経由で受け取り、ホルモンの形でメッセージを送り出すことによって心と体に作用していきます。


光で活性化された松果体の情報は、身体機能全般の調和や外界との調和に用いられます。

今は昼なのか、昼の長さはどのくらいなのか、明るいのか暗いのかなど、昼の長さに関連する情報を体の各部に伝えます。

外が明るいのか暗いのかの判断をし、いつ働いていつ休めば良いのかを体に教える松果体の力によって、私たちの生物学的なリズムはスムーズに働きます。


そして、今の季節はどの季節なのかといった情報も体の各部に伝えられます。人間の体は自然界と密接に関わり合っていて、調和を保ち、周囲の変化に対処する生理学的な調整が行われています。


動物の世界でもこのような調整作用があり、鳥類の渡りのタイミングや季節性繁殖などの季節のリズム、睡眠、覚醒リズムやホルモン分泌リズムの調整が行われています。

そして冬に近づくと、動物の毛が厚くなってくることも冬に備えるための生理学的な調整作用です。


松果体は概日リズム(サーカディアンリズム)を調節するホルモン、メラトニンを分泌しています。光に関するメッセージを視床下部の生物時計から受け取り、重要なホルモンであるメラトニンの分泌時期を決めます。

疲れていなくてもいつもの就寝時間になると眠くなるのはそのためです。

夜更かしや不規則な生活をしているとメラトニンがうまく分泌されず、睡眠のリズムに障害が出ます。さらに、昼間は頭がぼーっとする、食欲が出ないなどさまざまな影響が出ます。

メラトニンは生体リズム調整に重要な役割を果たしています。


一方、朝方から分泌されるホルモンはセロトニンです。

夕方メラトニンで眠くなり、朝セロトニンで起きるという正しい睡眠のリズムをとることが安眠につながります。


概日リズムは、約24時間周期で変動する生理現象で、このリズムは動物、植物、菌類、藻類などほとんどの生物に存在しています。


正確にスケジュールをこなしたり、体の他のリズムと一緒になって機能できるようにしたりするためには、昼・夜のサイクルにしたがって規則正しく太陽にあたる必要があります。


長期的なリズムの乱れは体の健康を悪化させ、さらに内分泌、自律神経にも影響を与えます。この乱れは「光」や温度、食事など外界からの刺激によって修正されますので、太陽の動きに連動した生活をすることが大切です。

そのため、健康であるためには

朝起きたら朝日を浴び、朝食をきちんと摂り、日中はしっかりと活動することが大事です。



小脳

小脳は身体運動を司っているところです。筋肉活動の調節や平衡感覚の調整をするはたらきがあります。

目にレッドの光を当てるとうまくバランスが取れ、

ブルーの光を当てるとヨロヨロしてしまうということが明らかになっていますので、

カラーが小脳に作用しているということがわかります。



視床下部

視床下部は、体温調節、血圧、心拍、食べる、飲む、性行動、睡眠などの本能行動、そして生体のリズムや怒りや不安などの情動行動を調整しています。

また、交感神経、副交感神経機能や内分泌を統合的に調整しています。色は目から入り、視床下部等などを刺激してホルモンの分泌を促します。



脳下垂体

多様なホルモンを分泌する内分泌器官で、様々なホルモンの働きをコントロールしています。


目から入った色の刺激が松果体や視床下部、脳下垂体に伝えられることにより、内分泌系や自律神経の働きに影響があるということが分かっています。


“B. 自律神経やホルモン分泌に影響する”


色が人に与える影響の測定が実証された研究があります。

数種類の異なった色の光を用いて、目から松果体へと光の情報を伝える実験がありました。

目に赤い光を当てて刺激したとき、心拍数、脈拍、血圧、呼吸数を計測すると、数値が上がることが分かりました。心拍数の変化により、赤は緊張や興奮が高まり、生物学的な活動や心の乱れの増加が関連します。

逆に青色は不安を和らげたり、行動や感情が鎮静したりするという生理的効果があることが分かっています。


これによって、放射される色が異なるとそれに応じて内分泌系も相互作用し、ホルモンの生成を刺激したり、抑制したりするということが分かりました。


自律神経を反応の指標に利用した研究では、血圧、脈拍数、呼吸速度の増加などの結果から、特定の色がこれらに加えて心の状態にも影響することが発見されています。


壁や床など全体が赤い色の部屋にいると体温が上昇し、心拍数や呼吸数が増え、興奮します。逆に、青い色の部屋にいると体温は下がり、心拍数や呼吸数が減り、心が沈静化するという結果が多くの研究によって実証されています。


そして、光の受容体は目だけではなく、肌にも影響しており、肌でも同じ結果が出ています。

光療法が発見されてからは、黄疸の出ている赤ちゃんは青色光を用いての治療が行われています。


これらのことから、色はこれら脳の中央部で知覚されているということがわかります。


色に反応するこうした人体のシステムから、私たちはまさしく光の体だということが言えるのではないでしょうか。


太陽のエネルギー

太陽の分光分布は、朝から昼になるにつれて光の量と光の質が変わります。そして、太陽の可視光線は特定の波長を持っています。

朝日(朝焼け)の赤〜オレンジ、昼にはイエローへと太陽が移り変わり、夕日の赤みがかったオレンジ、夕方のブルー、夜のパープルへと虹色に変化していきます。


太陽の移り変わりと共に、生理学的な活動は次第にゆるまり、やがて静まって回復に至ります。


地球上のすべての生命は太陽の光に支えられています。新しい一日の始まりを迎えると、花は開き、動物や人は目覚め、生理学的な活力がみなぎります。そして、行動力が高まり、世界にはエネルギーが溢れ出します。

これは、カラーは光であり生命の源であるということを意味しているといえます。



【色の心理的効果について】


“C. 感情や共感覚・連想を呼びおこす“


目は光を受け止める受容器です。

私たちは光が物体に当たるまでは何も見ることができません。

太陽光が様々な物体に反射した光が目で受容され、色や形、奥行きや動きなどを知覚します。

他にも、色は私たちの中に感情や記憶を呼び起こします。それは人とカラーが交流しているということがいえます。



カラーのワークショップ開催時の事例紹介


色を見るためのルート(心理効果)

網膜で受けた情報を視覚野で認識し、「これは赤だね」と情報を得て、区別し知覚します。

例えば、トイレに行って赤色のマークを見たら、「こちらは女性用トイレだ」と認識します。

これは心理効果と言われます。

心理効果.感情効果を他にも見ていきましょう。


“感情効果”

色には感情効果もあります。

例えば、イライラしているとき、怒っている時、興奮している時を色に例えるとどんな色が浮かびますか。



楽しい、ハッピー、おもしろい、はどんな色を思い浮かべますか。



色はこのように感情を表現することができます。

カラーセラピーのセッションでカラーボトルを選んでいただいた際に、相談者の心理状況を読み取っていく道標にもなります。



“共感覚“


より心理的効果を感じるために、実際に共感覚を感じてみましょう。


⒈ 寒さを感じるのはどんな色ですか?


⒉ 暖かさを感じるのはどんな色ですか?


⒊ あなたはこれからケーキ屋さんをオープンします。甘いイメージのお店にしたいとき、どんな色を使いますか?


⒋ あなたはこれからケーキ屋さんの支店をオープンします。その店を大人向けで高級感のある店にしたいとき、どんな色を使って表現しますか?


これらの質問を数十名にしたところ、1では、参加者全員がそれぞれにブルー・水色・ホワイトを挙げ、2では、オレンジやレッドが挙げられました。

そして、3ではほとんどの方がピンクと白を挙げました。中にはイエローグリーンを挙げられた方もおり、フレッシュなフルーツのケーキをイメージできたました。結果として全員のイメージした色が甘さや美味しさを表現していました。

4では、ほとんどの方がパープルやロイヤルブルーを挙げられていました。テーマがケーキ屋さんということもあり、高級なビターチョコレートを感じさせるダークブラウンを挙げられた方もいらっしゃいました。


共感覚の利用の仕方

その他にも、パッケージのデザインなどを決めるときに、共感覚を利用することがあります。


例えば、辛さを表す場面では、よくレッドが使われていますね。


ほかにレッドにはどんなイメージを抱きますか?


力強さや活発さ、情熱や行動力を連想される方もいらっしゃるでしょう。体力仕事や活力、生き抜くチカラなどもレッドで表されます。


次に

発熱したときや、体温を下げたいときに使う冷却シートの色はどうでしょうか。


冷却シートのパッケージ箱には、ブルーのカラーが使われています。

もし、冷却シートの箱がレッドのパッケージだったとしたら、さらに熱が上がってしまいそうな感覚を抱きませんか。

最近は優しいピンク色のパッケージの冷却シートも見かけます。

私は優しいピンク色に安心感が持てて手に取りたくなりました。


汚れを落とすイメージでは、ブルーがよく使われています。これは、ブルーは汚れが落ちやすそうという共感覚が利用されています。洗剤や歯磨き粉など汚れを落とす物にはよく使われていますね。より強力に落ちるイメージにはレッドが使われていますし、ナチュラルな感じのものにはグリーンが使われていることが多いです。


これらの心理的効果と生理的効果のことから、カラーは心と体に作用するということを結論付けることができます。